基礎経済学のおカネと銀行業 / Money and Banking
金融業は資金やおカネ(Funds or Money)の流通促進を目的とします。おカネには三つの主な機能があり、交換媒介物(Medium of exchange)、貯蓄手段(A means of holding wealth)、価値を測る尺度(A unit to measure value)です。
資金の種類 Money as defined by the Hong Kong Monetary Authority is classified
香港金融管理局(SFC)の定義によると、おカネは以下のように分類されています。
- M1:人々が所有するすでに発行した紙幣と硬貨の総数に、銀行の預金額を足したもの。
- M2:M1に銀行預金者の貯蓄と定期預金に、銀行が発行し人々が所有している譲渡可能定期預金証書(NCD: Negotiable certificates of deposit/可転譲存款証)。
- M3:M2に制限付きライセンスの銀行(Restricted licence banks)と預金受託会社(Deposit-taking companies)の顧客預金に、それらの機関が発行し人々が所有している譲渡可能定期預金証書(NCD: Negotiable certificates of deposit/可転譲存款証)を足したもの。
銀行の存在理由 The banks to facilitate the money market
銀行システムは、借り手におカネを貸し出し、預金者から調達した資金を使用することで、金融セクターの中で重要な役割を担っています。銀行が金融市場(Money market)を促進する必要がある理由は次のとおりとなります。
- 専門性(Specialization):
個々の預金者は潜在的な借り手の信用力を判断するための専門知識を持っていないのに対し、銀行は借り手の質の評価に特化。 - 投資(Investment):
銀行は貯蓄者の財の蓄積を支援し、より高いリターンと、より生産的な投資に向けて貯蓄を直接支援。 - 支払い(Payment):
銀行は口座保有者のために、当座預金、送金、クレジットカードを通じ、支払いを簡便化。
ちょっと一息コラム。専門銀行主義とホールディングス
日本の商業銀行が投資信託を扱い出したのは1996年~2001年にかけて行われた金融ビッグバンによる制度改革によりますが、銀行の兼業にも様々な方式が存在します。 専門銀行主義というのは、銀行分業主義ともいいますが、金融機能を分野ごとに区別し、それぞれの分野ごとに専門の金融機関を存在させる制度のことをいい、中国本土では、工商銀行や農業銀行のように専門銀行主義が色濃く残っています。
銀行が営業領域を選ばず証券、保険など全て業をなすことを完全兼業方式、銀行が証券保険業を自分の会社で直接支配するのではなく、持ち株会社を設立後、証券や保険にとどまらず銀行までもこの持株会社(ホールディングス)で支配することを、持ち株会社方式とも言います。
日本では金融ビックバンの後に、金融持株会社(FHC: Financial Holding Company)方式へと移行しましたが、この歴史はGHQに戦後処理のなかで解体させられた、財閥による同様の支配への回帰ともいえます。
持ち株会社方式を採用するメリットは、会社それぞれの一定の責任を持たせることが可能で、特定の会社が経営危機に瀕したときには、その他ぶらさがる会社である子会社に影響を極度におさえることが挙げられます。また特定の会社の収益が悪くても他のグループ会社の業績がよければ全体の利益を確保できるメリットが存在します。これは、経済が全体的な拡大局面に利益を出す方法と言えます。このほかには持株会社が資本を吸い上げて、資本を集中的にある業界を商圏としている子会社をサポートするのも容易となります。
しかし、この兼業制度にも問題がないわけではありません。金融業界では金融持株会社の権限が肥大化してしまうと独占の弊害が大きくなります。グループ内部のみの取引のみが慣習となり、小規模な銀行・証券や保険会社は生き残れなくなってしまいます。
顧客の立場では、なるべく多くの金融会社のなかから、選択できる選択権のような権利が保障されるべきであります。また、持株会社がグループ全体の方向性示すヘッドとしての役割を担えないようであれば、グループ内の意思決定が重複し、何も決めれなく、子会社間の利益調整のみに時間を浪費し、市場への対応スピードが遅くなります。
ちょっと一息コラム。おカネを10カ月借りたいのに1カ月だけ融資してあげる?銀行の存在意義
HSBCもそうですが、銀行という業種は預金を集めて融資することを業としています。これは深い意味を含んでいます。
まず、銀行がなければおカネの貸し借りのために、いわゆる投資家を探すはめになり不便が伴います。仮に投資家を探したしてもどれだけ信じられるか疑問が残りますよね。貸し手は借り手の情報がなければ相対的に高利で借り手を探すはずであるし、投資家(貸し手)が株を買い投資をする場合、なるべく割安な株式を買うことになります。しかし、安い株や高利で借りる者は、アンダーグラウンドな人や企業が多く、いろいろとリスクが付きまといます。つまり、おカネの貸し借りをできる相手を探し当てたとしても、すぐに取引ができるとは限らないということです。
銀行は市場をオープンにして相手方を探さないといけない煩わしさを解消してれます。他人におカネを貸したい人も、ただ銀行に預ければよく、誰に貸すかは銀行が勝手に決め、預金者は銀行が約束した利息だけでもらえば、それだけでよいですね。また、銀行は審査を行いリスクの高い企業や人に貸しだす可能性を遮断し、自身、分析および企業情報を公開することにより、ブラック企業株投資を予防することになります。厳格な管理の下、融資を得た企業がいいかげんに失う可能性を制限することになります。言い換えると、監査の役割も担っています。このように銀行は、取引相手を探す面倒をなくすだけでなく、望ましくない相手と取引をする可能性を遮断してくれます。
銀行はリスク分散
銀行の価値はリスクを分散する側面もある。例えば、10人の借入人と貸出人で構成されたグループの経済体があると仮定しよう。借入人10人中1人が不渡りの可能性がある人で、このとこき、1人の貸出人が1人の借り手に貸しつける取引をそれぞれ実行すると、10人の貸出人の中で1人が自身のおカネを全額損失を被ることになります。
銀行は不幸な貸出人1人を救うシステム
銀行はこのような不幸な貸出人1人を救うシステムであると言えます。銀行が10名からおカネを預かり10人に融資さえすれば1、0人は1人が起こす被害を分担、専門的には分散することになります。つまり、投資金の10%だけ損害を被るのである。銀行はもう一歩すすんで、リスクをゼロにするため、仮に被害が発生しても預金者に影響が出ないよう、利益から補てんし預金者に何の被害も出ないようにするのです。
このように銀行はリスクを自身には集中させたあと、顧客全体に分散することによってリスクをなくす役割を担っています。その過程で貸出利子の一部を自分でもらい、残りは預金者に支給する方法で収益を得ています。預金利息と貸出利子の差は預金者の立場において、投資金の損失リスクから回避する保険料に該当すると言えます。
満期不一致の解消機能
銀行の価値は、満期不一致の解消機能としての一面もある。一般的に貸し出す人は自身が必要な時、いつでも資金を回収を望みます。反面、借りた人は出来るだけ長い間、借りたい。特に長期投資を望む企業だと投資期間が終了するまで資金を貸し出さないといけません。
このような状況で銀行がないと金融機能は事実上麻痺する。貸出人はいつ返還されるかわからないので貸し渋り、借入人は返還要求がいつくるかわからないおカネを借りることは嫌で仕方がなくなります。この時、銀行があれば金融は機能し得るのである。例えば、10人の預金者と1人の借入人で構成された経済があると仮定し、10人の預金者が各自、一か月のみ10万円ずつ貸し出したいとするかたわら、借入人10カ月10万円を借りたいとする。このとき、銀行があれば、まず1人だけから10万円を預かりその分を貸出し、返還要求があれば、その他の預金者の分を貸し出せばよいことになります。つまり、預金者10人全員から順番に一カ月ずつ預金を運用し貸し出せば10カ月保障することができる機能を備えていることになります。
銀行の存在意義としてその他
銀行の支給決済技術も徐々に発達し、テレフォンバンキングからインターネットバンキングへとテクノロジーに対応し、決済業務が簡素化されていることも銀行の重要な存在理由、存在意義の一つとなっています。
銀行とは: 預金を預かり、貸し出す機関。人々から預金をもらって債券を発行しながら資金を預かりまた、組織的に融資して経済循環を円滑にする機関。