先週の市場:AI株主導で株高続伸、FOMC前に利下げ観測強まる
先週の金融市場は、地政学的リスクの高まりにもかかわらず投資家心理が堅調に推移した。米ドル指数は横ばい、金は史上最高値を更新し、米10年国債利回りは労働市場の弱さを背景に低下。米・欧州の社債スプレッドも縮小した。株式市場では米S&P500と日経平均が過去最高値を更新し、ユーロストックス50や韓国コスピ、香港ハンセン指数も上昇した。インドネシア株のみ政治不透明感から軟調だった。
今週は米連邦準備制度理事会(FRB)、イングランド銀行、日銀の政策決定会合が予定され、注目が集まる。市場はFRBが9か月ぶりの利下げを再開する可能性を織り込みつつあり、0.25%に加え0.5%利下げのサプライズも取り沙汰されている。足元の雇用統計は軟調で、6〜8月の非農業部門雇用者数は月平均3万人程度の増加にとどまり、医療部門を除けば民間雇用は4月以降減少傾向。インフレ率は依然2%目標を上回るが、足元では予想通りの推移で、関税要因で財価格の上昇も見られる。労働市場の悪化が長期金利の低下とイールドカーブのスティープ化を促し、利下げ期待(2026年末までに累計1.5%)とAI関連株の上昇が株式市場を支えている。
セクター動向:クラウド・AI株が牽引、ヘルスケアや生活必需品は軟調
オラクル(Oracle):決算はまちまちだったがクラウド売上見通しを引き上げ、株価は年初来+75%、週+41%(1992年以来最高)と急騰。ChatGPT向け3000億ドル規模の契約報道も。
アルファベット(Google):週+2.5%で過去最高値を更新。クラウド部門の受注残は1.06兆ドルに達し、年換算売上は5000億ドル突破。
テスラ:週+13%、マスクCEOの10億ドル報酬案やxAI投資観測が支援材料。
アップル:iPhone 17やAir発表もサプライズ乏しく-2.3%。AI言及は最小限。
アドビ:AI製品導入が上位顧客の9割に拡大し、決算は好調。株価は反発。
シノプシス:IP事業低迷で決算ミス、株価-35%。同業ケイデンスも連れ安。
Nebius:マイクロソフトと最大194億ドルのAIクラウド契約で+38%、CoreWeaveも+25%。
ユナイテッドヘルス:業績見通し維持とメディケア評価安定で+11.8%。
Warner Bros Discovery:パラマウント買収観測で+55%。
Klarna:IPO初日+15%、Geminiも初値から+14%で時価総額38億ドル。
労働市場の減速を背景にFRBの利下げ観測が強まり、AI関連株の急伸が株式市場を牽引している。一方で、景気後退懸念が金利市場で意識され始めており、今週のFOMCとドットプロット(経済見通し)が最大の注目材料となる。










