8月の世界経済動向:製造業の停滞、インド成長の一服感、フランス政治リスクの高まり
中国国家統計局(NBS)が発表した8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.4と、前月からわずかに改善したものの、5カ月連続で景気判断の分岐点である50を下回り、収縮基調が続いた。需要の弱さが依然として重荷となっているほか、「反内巻(アンチ・インボリューション)」キャンペーンによる短期的な成長の抑制も影響している。
一方、非製造業PMIは50.3と拡大基調を維持。夏季休暇に伴う旅行需要の増加や株式市場の好調によるセンチメント改善がサービス業の回復を支えた。ただし、建設活動は極端な気象条件や不動産市場の再度の弱含みで伸び悩み、全体の数値をやや抑えた。総じて8月のPMIは、景気の勢いが足元で鈍化している傾向を裏付けるものとなった。今後数カ月は、サービス消費やインフラ投資といった主要分野を中心に、内需拡大を目指す政策対応が着実に続くと見込まれる。
インド:第2四半期GDPは7.8%成長も、先行きは減速予想
インドの第2四半期(4~6月)の国内総生産(GDP)は前年比7.8%と、市場予想を大きく上回り、前期の7.4%も超える伸びを示した。政府支出の拡大が主因とされる。しかし、今後は成長の平常化が進むと見られる。
7~8月の高頻度データでは一時的な上振れが確認されているものの、9月以降は米国による50%の関税措置の影響が本格化し、とりわけ新規輸出受注の鈍化が懸念される。株式市場では景気および企業収益の伸び鈍化、外国人投資家の信認低下が重なり、株価収益率(P/E)の低下やETFからの資金流出につながっている。インド経済は基本的に内需主導型であるが、米国関税の大幅引き上げは投資家心理に打撃を与え、景気循環的な逆風も重なっている。
フランス:不信任投票の可能性で株式市場に不透明感
フランス株式市場は、来月に予定される不信任投票の可能性を背景に低迷が続いている。ベイルー首相は、9月8日に施政方針演説を行い、国民議会で信任投票を実施すると表明している。他の政治勢力は政府の予算案に対する立場を迫られることになる。現時点では複数の野党が反対を表明しており、政府が倒れる可能性は高い。
政府が崩壊した場合、マクロン大統領は国民議会を解散して再び総選挙を実施するか、新たな首相を指名する選択肢がある。しかし、いずれの選択肢も政治的な行き詰まりの解消につながるかは不透明である。政治的不確実性が高まる中、今後の市場変動リスクは増す可能性がある。
今後の注目ポイント
中国では、インフラ支出や消費刺激策の規模とタイミングが市場心理を左右する可能性が高い。政策効果の波及が確認できれば、製造業や不動産関連の回復に対する期待感が再び高まるだろう。
インドでは、米国関税の影響が輸出や企業収益にどの程度波及するかが焦点となる。特に9月以降の輸出関連データや外国人投資資金の動向が市場の方向性を占う鍵となる。
フランスでは、9月8日の信任投票の結果が決定的なイベントリスクである。政府崩壊の可能性が現実化した場合、欧州市場全体に波及するボラティリティ上昇も視野に入れておく必要がある。











