米国テック株の高バリュエーション懸念でリスク資産は不安定な展開に
米国のハイテク株の割高感が意識されるなか、リスク資産市場は不安定な値動きが続きました。米ドルは主要通貨に対して堅調推移となり、米国債は上昇。延期されていた9月の雇用統計で失業率が予想外に上昇したことが材料視されました。
一方、英国では財政悪化への不安から国債(Gilts)が売られ、長期債を中心に日本国債(JGB)も供給増懸念で下落しました。米ハイイールド債のスプレッドは拡大し、投資適格債に比べてアンダーパフォーム。株式市場も全般的に軟調で、米株は企業決算と金利見通しを見極める動きから下落しました。欧州のユーロ・ストックス50、日本の日経平均も下落。アジア市場も総じて弱く、香港ハンセン指数と韓国コスピが大きく下落した一方、インドのセンセックスは逆行高となりました。金価格は軟化し、暗号資産も下落が続きました。
米国株は反発、12月利下げ観測が急浮上
先週金曜日、米国株は反発。NY連銀のウィリアムズ総裁が労働市場の軟化を強調し、近く追加調整(利下げ)が必要とのハト派発言を行ったことが好感されました。
市場では12月のFOMCで25bp(0.25%)の利下げが行われる確率が70%まで急上昇。これは、前週のFOMC議事録(ややタカ派)後に30%近辺まで低下していた水準から大きく反転したものです。政府閉鎖終了により経済指標の発表は正常化が見込まれるものの、データの見通しに不透明感が残るため、FOMCの判断は慎重になる可能性があります。
当社では12月に25bpの利下げを予想していますが、2026年、2027年については政策金利の変更はないと見ています。米株には引き続き前向きである一方、ニュースや指標発表の多さから短期的には調整局面も想定されます。業種・地域の分散に加え、マルチアセットによる分散も有効と考えられます。
日本:総額21.3兆円の追加経済対策を閣議決定 — 成長押し上げと財政悪化懸念
高市首相は、一般会計支出17.7兆円、総額21.3兆円(GDP比3.2%)の経済対策を閣議決定しました。主な目的は、物価高への対応で、内閣府によればこの物価対策の効果により来年2〜4月の平均でインフレ率を0.7ポイント程度押し下げるとされています。日本のインフレ率はすでに3年半以上、日銀の2%目標を上回っています。
また、この対策によるGDP押し上げ効果は3年間で年平均1.4ポイントと試算されています。日本経済は、米国の関税の影響もあり、7〜9月期に6四半期ぶりのマイナス成長となっていました。
しかし、今回の追加支出は財政の持続可能性への懸念をさらに高めています。経済対策の財源となる追加国債発行額は昨年の6.69兆円を上回る見通しで、長期金利は過去最高水準まで上昇。円相場も1ドル=157円近辺と10カ月ぶりの安値圏に下落しました。
片山財務相は、物価を刺激しないよう配慮しつつ経済を支える必要性を強調し、高市首相も年間の国債発行額は昨年の42.1兆円を下回るとし、市場の懸念に対応する姿勢を示しました。
経済対策による成長押し上げ効果と、日銀内で強まるタカ派姿勢を踏まえ、12月の日銀会合で25bpの利上げという見方を維持しています。









