世界市場のリスク選好が回復:FRB利下げと米中貿易合意で投資心理が改善
リスク選好は、米中間の1年間の貿易合意および米国企業の第3四半期決算の堅調な結果を受けて強まりました。
パウエルFRB議長は「12月の追加利下げは既定路線ではない」と警告し、米ドル指数(DXY)は上昇しました。米国債は金利見通しの修正を受けて下落し、市場は2026年末までに0.25%の利下げを約3回織り込みました。米国およびユーロ圏のクレジットスプレッドは縮小し、特にハイイールド債がリードしました。株式市場では米国株がまちまちの動きを見せ、テクノロジー株中心のナスダックが好調でした。ユーロ・ストックス50と日経平均は史上最高値を更新し、円安の恩恵を受けた日本の輸出関連株が上昇しました。
新興アジア株式市場はまちまちの動きで、韓国のKOSPIは米韓貿易合意への期待感から大幅上昇。上海総合指数は小幅高、香港ハンセン指数は休暇に伴う取引縮小で下落しました。インドのセンセックス指数は横ばいでした。商品市場では金と原油が下落しました。
香港経済:輸出・消費・投資が回復基調
香港の第3四半期GDPは前年同期比3.8%増(前期比0.7%増)となり、輸出の好調と消費・投資の回復が成長をけん引しました。
8月以降、米国が他国に対して新たな関税を課したにもかかわらず、輸出入はいずれも二桁の伸びを示し、特にASEAN向け輸出は前年同期比36%増と急拡大しました。
小売売上も最近はプラス成長に転じ、9月には前年比5.9%増を記録。耐久消費財の販売が20.5%増と大きく寄与しました。金価格の上昇を背景に、宝飾品や高級品の売上も高水準を維持しています。投資活動も好調で、9月のFRB利下げ再開や金融市場の活発化を背景に、金融環境の緩和が寄与した可能性があります。
また、FRBの利下げを受けて香港主要銀行も最優遇貸出金利(プライムレート)を引き下げており、不動産市場には追い風となる可能性があります。
ただし、消費関連指標が改善する一方で、労働市場には圧力が見られます。失業率は9月に3.9%と過去3年で最高水準に上昇。特に建設業(7.2%)および宿泊・飲食業(6.4%)での弱さが目立ちます。
一方で、香港市場には依然として魅力的な投資要因があります。バリュエーションの割安感、潤沢な流動性、IPO活動の活発化、住宅市場の安定、そして消費回復への期待です。
FRB:予防的な0.25%利下げとバランスシート縮小の終了
FRBは先週、予想通り「保険的」な0.25%利下げとバランスシート縮小の終了を発表しました。
注目されたのは今後の政策ガイダンスで、市場が想定していたほどハト派的ではありませんでした。パウエル議長は「委員の間で強い意見の相違がある」と述べ、12月の追加利下げについては「決して既定路線ではない」と明言しました。
このややタカ派的な姿勢は、富裕層による消費の底堅さやAI関連投資の拡大など、予想以上に堅調な経済活動を反映しています。また、FRBは労働市場の冷え込みが緩やかに進んでいるとみており、過度な景気後退リスクを懸念していないようです。
それでも市場は、今後12カ月で3~4回の利下げを見込んでいます。インフレ指標が改善傾向にあるためです。パウエル議長は、「関税の影響で財価格には上昇圧力があるが、サービス分野ではディスインフレが進んでおり、関税を除けばインフレ率は2%に近い」と指摘しました。
総じて、予想を上回る成長とインフレデータ、そして緩やかな利下げという組み合わせは、4月以降のリスク資産の上昇トレンドを維持する要因になるとみられます。特に、米中貿易関係の改善が追い風となるでしょう。
ただし、投資家は「リスクとリターンの最適バランス」を見極める必要があります。米国株式市場の上昇は目を引きますが、依然としてテクノロジー銘柄への集中が強く、バリュエーションは割高です。
一方で、新興国市場(EM)は依然として割安で、FRBの利下げにより新興国中銀による追加緩和の余地が広がっています。米金利低下はドル安圧力につながり、2025年に入ってからのEM市場リターンを支える重要な要素となっています。









