米国株式は過去最高値更新、中国は選択的刺激策へ
先週金曜日、米国株式市場ではS&P500指数が0.5%上昇し、過去最高値を更新しました。関税に対する不確実性が残る中でも、市場はそれを乗り越える力強さを見せた格好です。特に、堅調な企業業績が市場の下支えとなっている点は注目に値します。
トランプ米大統領はカナダとのすべての貿易交渉を打ち切る決定を下し、一方でラトニック米商務長官は、米中間で今月初めに貿易枠組みが最終合意に達したことを示唆。さらに、米国は他の主要10カ国とも早期に貿易協定を締結する方針であると明らかにしました。こうした動きは、貿易政策における不透明感をやや払拭しつつあります。
週末には、米上院がトランプ大統領提案の「ビッグ・ビューティフル・ビル」を僅差で可決し、最終的な採決も間近に控えています。政策期待が再び高まりを見せており、投資家心理にもポジティブな影響を与える可能性があります。
5月のコアPCE(個人消費支出)価格指数は前月比0.18%上昇し、前年同月比では2.7%と市場予想をやや上回る結果に。インフレ傾向が確認される中で、5月の個人所得・支出は共に予想外の減少を示しました。実質消費も想定より軟調でしたが、これは一時的な調整と捉える声もあります。
依然として地政学的リスクやインフレ懸念といった不確定要素は残るものの、堅調な企業収益、平均を上回る利益率、健全な労働市場、そしてAI主導による生産性向上への期待感が、米国株式市場を支える構造的な強みとなっています。米政権による減税・規制緩和・財政出動といった政策の継続も、今後の市場上昇にさらなる弾みをつける可能性があります。
こうした環境下では、米国株式に対してオーバーウェイト(相対的に多めの資産配分)を維持する戦略が有効と考えられます。冷静な目で見れば、まだまだ「乗り遅れた」わけではありません。今からでも適切な銘柄選定と分散投資によって、恩恵を享受するチャンスが十分に存在しています。
一方、中国では、1〜5月の工業利益が前年同期比で1.1%減少し、1〜4月の1.4%増から減速しました。これはデフレ圧力が企業の収益性を引き続き圧迫しているためです。
しかし、セクター別に見ると、機械製造業は好調を維持し、同期間に前年同期比7.2%増という力強い成長を遂げています。また、政府による消費財の「下取り政策」が、スマート消費機器製造など関連分野の工業利益を下支えしています。これは、政策が的を射ていることを示す好例と言えるでしょう。
中国政府は、米中間の貿易枠組み合意を受けた緊張緩和を背景に、広範な金融緩和ではなく、対象を絞ったピンポイントの刺激策を採用しています。今後は住宅・サービス・デジタルインフラ分野を中心とした追加的な消費喚起策が打ち出されると見られており、内需拡大を目指す戦略に一貫性が感じられます。
中国の政策運営において注目すべきは、「技術の自立」「内需拡大」「産業の高度化」といった長期的な優先課題が着実に進行している点です。これらは一朝一夕で結果が出るものではないですが、中長期的に見れば大きな成長ポテンシャルを秘めています。
市場の変動をチャンスに変えるためには、今のうちに情報を整理し、リスクとリターンのバランスを見極めながら、投資ポートフォリオの再構築を図ることが重要です。特に、米中両国の政策動向に注目し、戦略的なアセットアロケーションを考えるべき局面に差し掛かっていると言えるでしょう。