揺れる米財政、日銀の利上げ観測
米下院が2017年の減税措置の延長法案を可決した一方、ムーディーズによる米国債の格下げを受けて、米国の財政持続性への懸念が市場に広がった。これにより、先週の投資家心理はリスク回避へと傾いた。米ドルは軟調となり、米国債の利回りは上昇。特に30年物国債利回りは5.00%の節目を上抜けた。英国のギルト(国債)利回りも上昇し、欧州諸国の利回りも軒並み上昇した。
米国のハイイールド債スプレッドは、数週間にわたる縮小局面の後に再び拡大し、投資適格債(IG債)のスプレッドは横ばいに推移。株式市場では、米国株が全面的に下落した一方で、欧州株はまちまちの展開となった。ユーロSTOXX50はほぼ横ばい、ドイツのDAXは上昇、フランスのCAC40は下落した。日本では、円高進行が重しとなり日経平均が下落。アジア市場は総じて方向感に欠け、香港のハンセン指数と中国の上海総合指数は上昇したものの、韓国のKOSPIとインドのSENSEXは下落した。
コモディティ市場では、OPECプラスによる増産の可能性が警戒され、原油価格は下落。一方、金価格は上昇し、暗号資産も週初の上昇基調を維持した。
日本国内では、日本銀行(BOJ)が最新のインフレ動向を受けて、金融政策の正常化に向けた路線を維持するとの見方が強まっている。4月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)は、前年同月比で3.5%と加速。米価の急騰(前年比ほぼ2倍)と、政府による電力・ガス補助金の縮小が背景となった。特にエネルギー価格は前年同月比9.3%の上昇を示したが、政府は6月にも補助金再開の可能性を示唆している。
それでも、全体としてインフレの基調は強く、日銀が追加利上げを実施する環境が整いつつある。我々は、日銀が年内にあと1回、10月に政策金利を0.75%に引き上げると予想している。債券市場では、長期金利が過去最高水準に達した後も不安定な動きが続いているが、日銀関係者からは現時点で市場介入の必要はないとのスタンスが示されている。