米国債格下げと米中関税緩和、交錯する要因に揺れるリスク資産
世界的な大手格付け会社は、米国債の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」へ1ノッチ引き下げた。同時に、財政赤字の持続的な拡大を反映して見通しを「安定的」に修正した。すでに他の格付け会社も同様の判断を示していることから、市場にとっては今回の格下げは織り込み済みで、大きな驚きには至らなかったと見られる。
一方、米下院では日曜深夜という異例の時間帯に、トランプ大統領の減税政策アジェンダを推進するための法案審議が行われる予定だ。仮に減税の法制化に向けた進展があれば、2026年以降の企業業績見通しが上方修正され、リスクセンチメントや米国株式市場にとって新たな支援材料となる可能性がある。
さらに、米中両国は先週、貿易摩擦緩和に向けて関税の一時的引き下げで合意した。中国からの輸入品には30%の関税が適用される一方、中国による米国製品への関税は今後90日間、10%に引き下げられる。これにより市場心理はリスクオンに傾き、米国株は大きく上昇。特にテクノロジーセクターが上昇を牽引した。
米国市場では、利下げ予想が年内2回に減少し、前週の「ほぼ3回」からやや後退。米ドルは緩やかな回復基調を継続し、米国債は欧州債の利回り上昇に歩調を合わせて下落した。信用市場では、米国およびユーロ圏のクレジットスプレッドが縮小し、リスク資産への選好が強まった。
欧州市場も、金融およびヘルスケア関連の好調な第1四半期決算を背景に続伸した。日本では、為替がレンジ内で安定した動きを見せる中、日経平均株価が小幅に上昇。他のアジア市場も堅調で、インドのSENSEXが特に強く、香港のハンセン指数、中国の上海総合指数、韓国のKOSPIもそれに続いた。
コモディティ市場では、原油価格が上昇に転じた一方で、金価格は前週の上昇局面から反落した。政策動向や地政学的要因が複雑に絡み合う中、市場は引き続き不透明感の高い環境下での選別投資が求められている。